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小説

宮沢賢治はこう書きだした。

「銀河鉄道の夜」(未定稿) 「ではみなさんは、そういうふうに川だと言いわれたり、乳ちちの流ながれたあとだと言いわれたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知しょうちですか」先生は、黒板こくばんにつるした大きな黒い星座せいざの図の、上から下へ白くけぶった銀河帯ぎんがたいのようなところを指さしながら、みんなに問といをかけました。 “Are you all right? It […]

江戸川乱歩はこう書きだした。

「D坂の殺人事件」1925年 (大正14年)  それは九月初旬のある蒸し暑い晩のことであった。私は、D坂の大通りの中程にある、白梅軒はくばいけんという、行きつけのカフェで、冷しコーヒーを啜すすっていた。 It was a hot and humid evening in early September. I was sipping cold coffee at my favorite cafe, […]

村上春樹はこう書きだした。

「風の歌を聴け」1979年 (昭和54年)  完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。 There is no perfect sentence. Just as there is no perfect despair. 「1973年のピンボール」1980年 (昭和55年)  見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きだった。 I was morbidly fond of […]

安部公房はこう書きだした。

「赤い繭」1950年 (昭和25年)  日が暮れかかる。人はねぐらに急ぐときだが、おれには帰る家がない。 The day goes by. People have a rushing color in the roost, and I have no home to go home. 「壁」1951年 (昭和26年)  目を覚ましました。朝、目を覚ますということは、いつもあることで、別に変ったこと […]

芥川龍之介はこう書きだした。

「羅生門」1915年(大正4年) ある日の暮方の事である。一人の下人げにんが、羅生門らしょうもんの下で雨やみを待っていた。 It’s the way of life one day. A servant was waiting for the rain under Rashomon. 「鼻」1916年(大正5年) 禅智内供ぜんちないぐの鼻と云えば、池いけの尾おで知らない者はない。 Sp […]

夏目漱石はこう書きだした。

「吾輩は猫である」1905年(明治38年) 吾輩は猫である。名前はまだない。 I am a cat. there is no name yet. 「倫敦塔」1905年(明治38年) 二年の留学中ただ一度倫敦塔ロンドンとうを見物した事がある。 Only once during my two years studying abroad in London I have seen the tower. […]